【笑いの医療】映画「パッチ・アダムス」に学ぶ介護と心の豊かさ

歯科医を目指していた学生時代、一本の映画が教えてくれたこと
私(鹿又 正光)が大学生の頃、まだ歯科医を目指していた時期のことです。
お世話になっていた歯科医の先生が、ある日こう言いました。
「この映画を観てごらん。僕は彼のようになりたいんだ。」
そのとき手渡されたDVDが、1998年公開の映画『パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー』でした。
主演のロビン・ウィリアムズさんが演じるパッチは、病気を診るだけでなく、人の心を癒やす医師。
白衣の代わりに赤いピエロの鼻をつけ、患者を笑わせ、寄り添う姿に強く心を動かされました。
当時の私は「治す」とは技術のことだと信じていました。
けれどこの映画は、「人を治すとは、心に光を戻すことでもある」と教えてくれたのです。
パッチという人 ― 医療を「人間らしさ」に取り戻した実在の医師
映画のモデルとなった実在の医師、ハンター・“パッチ”・アダムスさんは、1971年にアメリカでGesundheit! Institute(ゲズントハイト研究所)を設立しました。
そこでは無料の医療を行いながら、笑いと愛情、そして人間らしさを取り戻す医療を実践しています。
パッチさんは「病気を治すのではなく、人を幸せにする」ことを目的に活動し、病室では冗談を言いながら患者と笑い合いました。
彼が信じていたのは、“人は笑うことで心の免疫力を取り戻す”ということ。
その哲学は、医療だけでなく、人を支えるあらゆる仕事に通じるものがあります。
医療ユーモアは、介護の現場にも通じる
私は今、ウェルビーという自費の支援サービスを運営しています。
日常生活のサポート、身元保証、終活支援など――
人生の最終章に寄り添うお手伝いをしています。
その中で感じるのは、支援の本質が「安心」と「心の豊かさ」にあるということです。
私たちが提供しているのは、単なる手続きや付き添いではありません。
「誰かが自分のことを理解してくれる」「心配ごとを一緒に笑いながら話せる」――
その安心感が、人の生き方を変える力を持っているのです。
パッチのユーモアは、まさにこの「心の豊かさ」に通じています。
彼は病気を消すのではなく、孤独を軽くし、心を自由にする方法として“笑い”を使いました。
ウェルビーもまた、人生の不安や孤独を抱える方々の心に、安心と笑顔を灯す存在でありたいと考えています。
笑顔の数だけ、健康寿命は延びていく
映画『パッチ・アダムス』を観てから約二十年。
私は支援の仕事を通して、あの映画で感じた「笑いの力」を何度も実感してきました。
高齢になって不安を抱える方も、終活に悩む方も、笑顔を取り戻した瞬間に前を向き始めます。
笑いはただ楽しいだけでなく、「生きる意欲」を呼び起こす力なのです。
パッチが信じたように、人は誰でも「幸せになりたい」と願う存在です。
その願いを支え、安心できる日々をともに作ること。
それが、ウェルビーが大切にしている“心の医療”であり、生きる支援の形だと感じています。
参考リンク
Gesundheit! Institute(パッチ・アダムスさん公式サイト)