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もの忘れが増えたと感じたら…国立長寿医療研究センターが教えるMCIから「逃げ切る」ための知識

2025.05.07
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最近「もの忘れが増えた気がする…」と感じていませんか?それとも、ご家族や周りの方から「忘れっぽくなったね」と言われることが多くなりましたか?もしかしたらそれは、MCI(軽度認知障害)かもしれません。

この記事では、国立長寿医療研究センター発行の「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」をもとにMCIとは何か、認知症とはどう違うのか、そしてもしMCIと診断されたらどうすれば良いのか、科学的に証明されている情報を基に分かりやすくお伝えします。

MCIって一体何?認知症とは違うの?

まず、MCIとは「Mild Cognitive Impairment」の略で、軽度認知障害と呼ばれています。

これは、「健常な状態」と「認知症」のちょうど「中間のような状態」です。

「もの忘れ」などの認知機能の低下は感じるけれど、日常生活は問題なく送れている状態を指します。お金の管理や食事、服薬など、一人で生活する上で必要なことが困難になる認知症とは区別されます。

重要なのは、MCIは認知症そのものではないということです。そして、MCIの人が必ず認知症になってしまうわけではありません。

医療機関でMCIと診断された方のうち、1年後に認知症に移行するのは約5~15%程度です。残りの方は、MCIのレベルに留まるか、年相応の正常なレベルに回復する方もいます

「もの忘れ」は加齢のせい?それともMCI?

年を重ねると、誰でも「もの忘れ」を経験することが増えますね。では、加齢による「生理的なもの忘れ」とMCIで見られる「もの忘れ」はどう違うのでしょうか?

生理的な「もの忘れ」は、体験したことの一部分を忘れるのが特徴です。例えば、「朝ご飯に何を食べたか思い出せない」といったことです。

一方、認知症やMCIでよく見られる「もの忘れ」は、「いつ、どこで、何をしたか」という出来事の記憶(エピソード記憶)の障害が目立ち、体験したすべてを忘れてしまうという特徴があります。例えば、「朝ご飯を食べたこと自体を忘れてしまう」といったことです。

MCIの状態では、特に記憶力に軽度の低下が見られる場合が多くあります。以前と比べてもの忘れが多いと感じたり、ご家族や周りの人からもの忘れを指摘されることが多くなった場合は、もの忘れ外来への受診を検討してみることをお勧めします。

もしMCIと診断されたら?早めの対策がカギ!

MCIと診断されたとしても、必要以上に心配する必要はありません。なぜなら、MCIは適切な対策を行うことで、健常な状態に戻る可能性があり、認知症への移行を遅らせることも期待できるからです。

早期から認知症予防の対策を行っていくことが非常に重要です。

特別なことばかりではありません。日々の暮らしに、科学的に証明されている認知症予防の方法を取り入れていくことが大切です。

今日からできる!MCI予防のための生活習慣

ソースによると、MCIから健常な状態への回復や、認知症への進行を遅らせるためには、いくつかの生活習慣の改善が有効であることが示されています。

ここでは、その具体的な対策をいくつかご紹介します。

1. 適度な運動を習慣に!

運動不足は認知症の発症に関連する因子の一つです。 健常な高齢者を対象とした研究では、運動習慣がない方は週2~3回以上運動習慣がある方と比べて認知症になるリスクが1。82倍であると報告されています。

運動は認知機能の低下予防に有効であり、認知機能の向上に効果がある可能性も示されています。運動することで、脳の血流量が増加したり、神経細胞が増えるといわれています。

どのような運動が良いのでしょうか?

  • ウォーキングなどの有酸素運動や、**スクワットやかかと上げのような筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)**が効果的です。
  • MCIの方には、複数の種類を組み合わせた運動プログラムが最も効果的であるとされています。
  • 運動課題と認知課題を組み合わせた**「コグニサイズ」**も、全体的な認知機能や記憶、脳萎縮に対して改善効果が認められています。
  • 週にどれくらい行えば良い? 週3日以上の頻度で半年以上継続し、さらに中強度以上(少し息がはずむがおしゃべりできる程度)の運動で、効果が大きくなることが期待されます。

継続することが大切です。ウォーキングやサイクリング、ダンスなど、自分が続けやすく楽しめる運動を選びましょう。

2. バランスの良い食事を心がける

「これを食べれば認知症を防げる!」という特別な食品は、今のところ科学的に証明されていません。

最も良いのは、何を食べるかではなく、バランスよく適切な量を食べることです。

  • 様々な種類の食品を食べることで、認知機能が悪化する危険性が減少することが報告されています。
  • 特に、野菜や果物、魚などの食品がおすすめです。
  • サプリメントなどの栄養補助食品を長期的に摂取した場合の効果は十分に分かっていません。 食事から十分な栄養を摂取できない場合は、栄養不足を補うために活用しましょう。
  • MCIの高齢者には栄養不足の方が多いと言われています。 食べる量や体重の低下に注意しましょう。
  • 食事は、脳に必要な栄養素を補うだけでなく、五感を刺激し、精神的な満足感を与える行為です。
  • 一人で食べる「孤食」は、誰かと一緒に食べる「共食」に比べ、認知機能の悪化と関連することが報告されています。 家族や友人との会話がある食卓は、心も満たしてくれますね。
  • 旬の食材を取り入れたり、彩りを豊かにしたり、温かいものや冷たいものを楽しむなど、変化に富む食事を楽しむことも認知症予防に有効です。

3. 人との交流や社会参加を大切に

人との会話や交流は、認知症の発症や進行予防に重要です。

  • 人との交流が少ないと認知症になる可能性が高まることが示されています。 週に1回以上は同居人以外の方とも会話する機会を持つように心がけましょう。
  • 直接会えなくても、電話やビデオ通話などを活用することも、認知症リスクを低下させる可能性が報告されています。
  • 読書やパズル、楽器の演奏、囲碁などのボードゲームといった頭を使う活動は、認知症への予防効果が高いと報告されています。 週6時間以上取り組むことで、認知症の発症が予防できるという結果もあります。
  • 地域での活動やボランティアなど、ご自身の能力・関心・興味に応じた活動に参加することも良いでしょう。

4. 生活習慣病や難聴の管理を

糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、認知症と深く関わっています。 特に中年期からの管理が重要とされています。

耳の聞こえにくさも、認知機能の低下と関連するとされており、認知症を発症するリスクが高くなることが分かっています。 耳が聞こえにくい場合は、補聴器を使用することで認知機能の低下を遅らせられる可能性があります

飲酒量が多いと認知症の危険性が高くなることが多くの研究で報告されています。 MCIの方は、認知機能に問題がない人と比べて、より少ないアルコール量でも認知症の危険性が高くなるため注意が必要です。

気分の落ち込みやイライラが気になる時

最近、以前とは違う気分の変化(落ち込みやすい、イライラするなど)に戸惑うことがあるかもしれません。これは、**軽度行動障害(MBI)**と呼ばれる症状の一つである可能性があります。 MBIを有する方は、認知症を発症するリスクが高いとする報告があります。

しかし、気分の変化の原因は様々です。ストレスや他の病気の影響なども考えられます。 「認知症の前触れかも」と安易に自己判断せず、気分の変化が続く場合は医療機関を受診し、医師に相談することが大切です。

ご家族は、まずご本人の最近の様子や生活を振り返り、イライラなどの原因を探ってみることも有効です。

どこに相談すれば良いの?地域のサポートを活用しよう!

「もの忘れが気になるけれど、これって病気?」「MCIと診断されたけど、どうすれば良いの?」など、様々な不安や疑問が出てくるかもしれません。そんな時は、一人で抱え込まずに地域のサポート機関に相談しましょう。

  • 地域包括支援センターは、高齢者のための総合相談窓口です。生活に関するさまざまな困りごとや悩みに応じて、必要な支援やサービスの紹介を行っています。
  • 静岡市認知症ケア推進センター「かけこまち七間町」は、認知症に関する総合相談窓口です。もの忘れが気になり始めた段階から相談でき、生活面での困りごとや必要な支援、利用できるサービスについて案内を受けられます。
  • 認知症疾患医療センターや、もの忘れ外来を設置している医療機関では、詳しい検査や診断を受けることが可能です。日頃から受診している「かかりつけ医」に相談することも、有効な第一歩となります。

困った時に相談できる相手(ソーシャルサポート)がいることは、認知機能の低下を防ぐことにもつながります。 身近に相談できる人がいないと感じる場合は、ぜひ地域の支援機関に連絡してみてください。

おわりに

MCIや認知症の予防は、「逃げ切り作戦」とも言われます。 病気の進行を完全に止める薬はまだありませんが、適切な対策を行うことで、認知機能の低下を遅らせ、自分らしい生活を長く続けることが期待できます。

適度な運動、バランスの良い食事、脳を活性化する活動、そして人とのつながりを大切にすること。これらの「あたり前のこと」を日々の生活で継続することが、認知症の危険性を減らすために何よりも大切です。

このハンドブックは、科学的に証明された情報と、MCI当事者やそのご家族の意見を基に作成されています。 最新の認知症予防を実践することで、皆さまの日々の暮らしがますます充実することを願っています。

もしもの忘れなどで気になることがあれば、まずは一人で悩まずに、地域の相談窓口や医療機関に相談してみることから始めましょう。

国立長寿医療研究センター
あたまとからだを元気にするMCIハンドブック

静岡市認知症ケア推進センター「かけこまち七間町」
認知症予防のためのプログラム

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