成年後見が変わります。「終われる後見」で、ケアマネの現場はどう変わる?

担当の利用者さんに後見の利用を勧めるかどうか——迷った経験のあるケアマネジャーの方は、少なくないと思います。
「一度始めたら、本人が亡くなるまで続く」「後見人と相性が悪くても、簡単には代われない」。いまの成年後見制度には、現場がためらう理由がありました。
その前提が、変わります。2026年6月、成年後見制度を見直す法律(民法等の一部を改正する法律、令和8年法律第45号)が成立しました。この記事では、ケアマネジャー・地域包括支援センターの皆さまに向けて、「何が・いつ・どう変わるのか」を、よくなる点(メリット)と注意したい点(デメリット)の両面から整理します。
意外に知られていない、いまの後見の「原則」
いまの成年後見は、一度始まると、本人の判断能力が回復しない限り、亡くなるまでやめられないのが原則です。
たとえば「遺産分割の手続きのために後見人が必要になった」という場合でも、手続きが終わったあとも後見は続き、報酬も発生し続けます。「そこまでの覚悟はない」と、利用をためらうご家族が出てくるのは自然なことでした。
今回の改正は、この原則そのものを見直すものです。
よくなること——改正のメリットを3つに整理
法務省の公表資料をもとに、現場に関わりの深いところを3つにまとめます。
1. 必要なくなったら「終われる」ようになる
本人の判断能力が回復していなくても、制度を利用する必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば、終了できるようになります。「遺産分割のときだけ」「施設の契約のときだけ」といった、期間を区切った使い方に道がひらかれます。
2. 後見・保佐・補助の3類型が「補助」に一元化される
これまでの後見・保佐・補助という3つの区分は廃止され、補助の制度に一元化されます。本人に必要な事項についてだけ、必要な範囲で代理権などを付ける形になり、利用の開始には原則として本人の同意が重視されます。
3. 本人の意見がより尊重され、交代もしやすくなる
誰が補助人になるかの選任では本人の意見が重要な考慮要素とされ、本人の利益のために特に必要がある場合には、家庭裁判所の判断で交代できる仕組みが整えられます。あわせて任意後見契約の仕組みも見直され、たとえば受任者が先に亡くなった場合に備えて、次に引き受ける人をあらかじめ決めておけるようになります。
施行は「公布の日(2026年6月24日)から2年6か月を超えない範囲内で政令で定める日」とされています。つまり、遅くとも2028年の年末までには新しい制度が始まる見込みですが、確定した日付はまだ決まっていません。
数字で見る、いまの成年後見
最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」によると、令和7年12月末日時点の成年後見制度の利用者数は合計259,901人。1年間の申立件数は43,159件で、申立ての動機として多いのは「預貯金等の管理・解約」や「身上保護」でした。
一方、本人が元気なうちに「将来この人に頼む」と自分で決めておく任意後見の利用者は、2,833人。全体の約1%です。制度の入り口の多くが「困ってから」の法定後見に偏っていて、「困る前に本人が決めておく」使い方は、まだほとんど広がっていないのが実情です。
ただし、よいことばかりではありません——知っておきたい3つの注意点
一方で、専門職の団体からは、運用しだいで本人が不利益を受けかねない点も指摘されています。日本弁護士連合会(日弁連)も、司法書士の全国組織(成年後見センター・リーガルサポート)も、2026年2月の声明で改正そのものは高く評価したうえで、次のような課題を挙げています。
注意点1 守られる範囲が、いまより狭くなる場面があり得る
いまの後見は、日常の買い物などを除いて、本人の契約を幅広く取り消せる仕組みです。改正後は「必要な事項だけ」に権限を付けるのが基本になるため、権限を付けていない契約で悪質商法などの被害に遭ったとき、取り消しで守れない場面が出てくるおそれがあります。日弁連は会長声明で、幅広い取消権を持つ「特定補助人」の仕組みについて「限定的かつ厳格な実務運用」と政府による検証を求め、あわせて消費者保護の法制度の整備が不可欠だとしています。
注意点2 「終われる」の裏返しで、終わったあとの支えが課題になる
制度を終了できるのは前進ですが、終わったあとに本人を支える人がいなければ、守りが外れるだけです。リーガルサポートは理事長声明で「制度の利用終了後も、引き続き権利擁護が必要な人々を支えていくことが求められる」として、地域の支援の仕組みと社会資源の充実を求めています。
注意点3 制度を支える体制づくりは、これからが本番
必要性を確かめる司法審査が形だけにならないか。後見人の引き受け手や報酬、家庭裁判所の体制は足りるのか。日弁連は声明で、報酬助成制度の見直しや家庭裁判所の人員拡充、市町村の人材・財源の確保を求めており、民法を変えるだけでは完結しない課題が残っています。窓口の実務でも、権限の範囲が一人ひとり違う形になるため、「この補助人は何をできる人か」の確認には、今より丁寧さが求められそうです。
施行までの間、ケアマネの現場でできること
新しい制度が始まるまで、いまの制度で動く期間が続きます。メリットとデメリットの両方を踏まえると、大事なのは「制度が変わるのを待つ」ことではなく、いまできる備えで空白を埋めておくことです。この間に現場でできることを挙げます。
- いま後見の申立てを検討しているケースは、従来どおりの制度で進みます。申立ての手続きは、司法書士・弁護士などの専門職や、お住まいの自治体の中核機関・社会福祉協議会と連携して進めるのが確実です
- 「まだ判断できるうちに備えたい」という利用者さんには、任意後見という選択肢があります。今回の改正でも、本人の意思をあらかじめ形にしておく仕組みはより使いやすくなる方向です
- そして、後見人が付いても埋まらない部分があります。入院時の身元保証、緊急時の駆けつけ、亡くなったあとの葬儀や納骨といった「実働」は、後見人の本来の仕事の外側にあり、ここが空白のままだと、制度が変わっても現場の困りごとは残ります
私たちウェルビーの身元保証・終活支援は、まさにこの「後見だけでは埋まらない部分」を契約で引き受ける仕事です。後見や任意後見と組み合わせて使っていただくことを前提に設計しており、司法書士・弁護士などの専門職とも連携しています。静岡市の終活支援優良認証を受けた事業者として、紹介いただく際に確認したい契約内容や料金の説明は、先に・内容とセットでお出しします。
なお、ウェルビーは連帯保証人にはなりません。これは「できないから」ではなく、会員を守るためです。立て替えや負債のカバーを引き受けてしまうと、会員の安心のためにお預かりしている体制そのものをリスクにさらすことになるからです。できないことを先にお伝えするほうが、あとで信頼が残ると考えています。一般の会社と違って、入院や手術といった場面に立ち会う仕事だからこそ、その人の場面に合ったものをあらかじめ用意しています。
保証人や後見で止まっているケースがあれば
「後見人はいるけれど、入院の保証人欄が埋まらない」「身寄りのない利用者さんの、亡くなったあとのことを誰に頼めばいいか分からない」。そんなケースを抱えていらっしゃったら、一度ご相談ください。制度の見直しをにらみながら、いまの制度でできる組み合わせを一緒に考えます。
ケアマネジャー・地域包括支援センターの皆さまからの連携のご相談は、お電話(050-1784-4499)またはお問い合わせフォームから。「記事を見た」とお伝えいただければ、担当の状況に合わせてお話しします。
※本記事は、法務省・最高裁判所・専門職団体の公表資料をもとに制度の概要をご紹介するものです。ウェルビーは法律専門職ではないため、個別の法律相談や手続きの代理は行わず、必要な場合は提携する弁護士・司法書士などの専門職におつなぎします。

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